体調のこととか、思い出とか
【退職後に急変してしまったお爺さん】
この方は、私がまだ1番の下っ端の頃のお客さん。
(時期的には、第1回の「番外編のお婆さん」と同じなんだけど)
私が赴任する前からの、職場の常連客のような人だった。
お爺さんは、職場近くの製菓会社に長く勤めていたらしい。
おそらく正社員でずっと働いてきて、
高齢になってからはアルバイトで引き続き、同じ会社で働いていたようだ。
そのお爺さんの楽しみは、毎月のお給料日。
給与も年金と同じで、一般的には決まった日に自動的に通帳に振り込まれるものだけど
高齢者の人は大抵(昔の現金で渡される時代のせいか)
私たちがお金を入れると思っているみたいで
「通帳に年金入れて」とか「給料入れて」とか言ってくる。
記帳しなくても、もう入っているのになあと思いつつ、
私たちは「はい、どうぞ。入ってますよ」と印字したページを見せる。
そうすると、満足そうにお客さんは確認して必要なお金を出金する。
だから、そのお爺さんも毎月「給料入っとるか?」と言いながら、やってきては
「いくら入っとる?」と聞くので、「○○円ですよ」と答えると
「そうか!」と嬉しそうにお給料を引き出していた。
ちなみに、そのお爺さんは一人暮らしだったようで。
家族の話も一度も聞いたことがなくて。
でも、毎回来るたびに、ロビーに長く居座って一人でよくしゃべっていた。
たまによく理解できない内容もあって、私たちは相槌を打つことが多かったけども
思い出すのは、よくニコニコと楽しそうに笑っているお爺さんの顔だった。
そして、たまに(目標となっている)サービスをお願いして利用してくれた時には
お爺さんにささやかなお礼(粗品)を渡していたんだけども
お爺さんが喜んでいたのは、1個の固形石鹸だった。
実は、今だったらなんでもきちんと決まり事があって難しいが
昔はかなりアバウトでローカルルールが通っていたから
粗品が足らなかったり、家に何か使えそうなものがあったら
職場にもってきていたことがあったり。(もちろん未使用品)
話せば長くなるので省略するが
その時渡していた石鹸は、私の家にたくさん余っていたものだった。
(バザーに出してもいたけど、まだ余裕であった)
そして、他の粗品よりもお爺さんは「この石鹸が1番ええわ」と言って喜んでいたから、きっと「石鹸を買わなくてすむからいいのかな」と思っていた。
そういう賑やかなお爺さんとつきあって、数年たった頃だろうか。
ある時、お爺さんから「もうすぐ退職する」ということを聞いた。
会社のほうから言ってきたのか、それとも契約期間が切れたのか
自分から言いだしたのか、そのあたりはわからないけれども
少なくとも、その話をしていたお爺さんは決してがっかりしたような雰囲気ではなかった。
いつも通り明るかったから、きっと仕事を全うするんだなと思っていた。
その反面、じゃあ、もうお給料が通帳に入らなくなるから
お給料日にお爺さんも来ないんだなと思った。
ところが、である。
お爺さんは退職した後も、職場のロビーにたびたび現れた。
そうして、ソファに座って一人べらべらとしゃべっている。
最初は、時間の過ごし方が変わったし、話し相手が欲しいのかなと思っていた。
でも、段々とおかしくなっていった。
(あと、少し臭いもするようになったかも)
まず、なんか管を巻くようなものの言い方になってきて
それから営業時間が終わり近くになってもなかなか帰ることをせず、ロビーに居座るようになった。
「もう帰ったらどうか」と上司が言っても、聞き入れない。
そのうち、お爺さんは自分で帰らず「迎えに来させる」と言いだす。
誰に迎えに来させるかって、それが(今まで自分が勤めていた)製菓会社の人に。
そうして、「会社に電話をかけてくれ」と、私たちに言いだした。
「金をやるから迎えに来いって言ったら、すぐに来るわ」
「迎えに来るまで帰らへん」とそう言い張るのだ。
私たちはほとほと困ってしまったが
上司が許可したので、その会社に電話をすることにした。
はたして、対応してくれるのかどうか。
普通に考えたら、退職した人のことなど、ここまで面倒をみれるはずがない。
しかも、「迎えに来い」などと言う人物に、会社が快く応じることはできはしないだろう。
しかし、製菓会社の奥さんは、「迎えに行きます」と言ってくれた。
そこの会社は給与預入もしてくれていたので、奥さんにも毎月お世話になっていたのだけど(だから、たまには私たちもお菓子を買っていた)
まさか、そこまでお爺さんの面倒を見てくれるとは思いもよらず、ある意味感心した。
たぶん、長年働いてくれたお爺さんを無碍にできなかったのかもしれない。
そうして、奥さんはお爺さんを迎えに来て
「どうもすみませんねえ」と頭を下げて、連れて行った。
しかし、お爺さんは
「ほれみろ!金をやると言ったら、すぐに迎えにきたやろ!」と
まるで金欲しさのために迎えに来たと思っているようなことを言っていたのだ。
そんなことが何度も続き、あまりお爺さんがダダをこねるので、
一度上司が「そんなワガママ言うたらアカン!!」と一喝。
すると、お爺さんはまるで子供のようにシュンとして「はぁ~い」と返事をした。
そんなことも記憶に残っている。
それからどうなったのか、
いつのまにかお爺さんは来なくなって。
平穏な日が続いていたある日
おじいさんの消息を知ったのは1本の電話だった。
どういう関係かしらないが、血縁者らしい人からの電話を上司が取った。
なんでも「亡くなったから、お金のことはそちらのほうがよく知っているだろう」とかなんとか。
いくらなんでも、電話でどこの誰ともわからない人には詳細は教えられず
よほど相手の口調が気に入らなかったのか
上司はかなり愛想のない返事をして電話を切っていたけれども。
そうか・・・
あのお爺さん、死んでしまったのか・・・と、その時知った。
退職してからの、お爺さんのあの変わりようは本当に驚くほどだった。
数か月なんだけど、あっという間という言葉がぴったりな感じで。
きっと、環境の変化についていけなかったのかもしれないけども
張り合いがなくなると、あんなに変わってしまうんだ。
あのまま働いていたら、変わらなかったのかなあ。
あんなにお給料を楽しみにしていたのに・・・と、ひどく残念に思った。
~認知症予防に力を入れたり、介護サービスを利用できる今の時代だったら、
もう少しお爺さんの変化は穏やかで、もう少しは長生きできたかもしれないなあ~
この方は、私がまだ1番の下っ端の頃のお客さん。
(時期的には、第1回の「番外編のお婆さん」と同じなんだけど)
私が赴任する前からの、職場の常連客のような人だった。
お爺さんは、職場近くの製菓会社に長く勤めていたらしい。
おそらく正社員でずっと働いてきて、
高齢になってからはアルバイトで引き続き、同じ会社で働いていたようだ。
そのお爺さんの楽しみは、毎月のお給料日。
給与も年金と同じで、一般的には決まった日に自動的に通帳に振り込まれるものだけど
高齢者の人は大抵(昔の現金で渡される時代のせいか)
私たちがお金を入れると思っているみたいで
「通帳に年金入れて」とか「給料入れて」とか言ってくる。
記帳しなくても、もう入っているのになあと思いつつ、
私たちは「はい、どうぞ。入ってますよ」と印字したページを見せる。
そうすると、満足そうにお客さんは確認して必要なお金を出金する。
だから、そのお爺さんも毎月「給料入っとるか?」と言いながら、やってきては
「いくら入っとる?」と聞くので、「○○円ですよ」と答えると
「そうか!」と嬉しそうにお給料を引き出していた。
ちなみに、そのお爺さんは一人暮らしだったようで。
家族の話も一度も聞いたことがなくて。
でも、毎回来るたびに、ロビーに長く居座って一人でよくしゃべっていた。
たまによく理解できない内容もあって、私たちは相槌を打つことが多かったけども
思い出すのは、よくニコニコと楽しそうに笑っているお爺さんの顔だった。
そして、たまに(目標となっている)サービスをお願いして利用してくれた時には
お爺さんにささやかなお礼(粗品)を渡していたんだけども
お爺さんが喜んでいたのは、1個の固形石鹸だった。
実は、今だったらなんでもきちんと決まり事があって難しいが
昔はかなりアバウトでローカルルールが通っていたから
粗品が足らなかったり、家に何か使えそうなものがあったら
職場にもってきていたことがあったり。(もちろん未使用品)
話せば長くなるので省略するが
その時渡していた石鹸は、私の家にたくさん余っていたものだった。
(バザーに出してもいたけど、まだ余裕であった)
そして、他の粗品よりもお爺さんは「この石鹸が1番ええわ」と言って喜んでいたから、きっと「石鹸を買わなくてすむからいいのかな」と思っていた。
そういう賑やかなお爺さんとつきあって、数年たった頃だろうか。
ある時、お爺さんから「もうすぐ退職する」ということを聞いた。
会社のほうから言ってきたのか、それとも契約期間が切れたのか
自分から言いだしたのか、そのあたりはわからないけれども
少なくとも、その話をしていたお爺さんは決してがっかりしたような雰囲気ではなかった。
いつも通り明るかったから、きっと仕事を全うするんだなと思っていた。
その反面、じゃあ、もうお給料が通帳に入らなくなるから
お給料日にお爺さんも来ないんだなと思った。
ところが、である。
お爺さんは退職した後も、職場のロビーにたびたび現れた。
そうして、ソファに座って一人べらべらとしゃべっている。
最初は、時間の過ごし方が変わったし、話し相手が欲しいのかなと思っていた。
でも、段々とおかしくなっていった。
(あと、少し臭いもするようになったかも)
まず、なんか管を巻くようなものの言い方になってきて
それから営業時間が終わり近くになってもなかなか帰ることをせず、ロビーに居座るようになった。
「もう帰ったらどうか」と上司が言っても、聞き入れない。
そのうち、お爺さんは自分で帰らず「迎えに来させる」と言いだす。
誰に迎えに来させるかって、それが(今まで自分が勤めていた)製菓会社の人に。
そうして、「会社に電話をかけてくれ」と、私たちに言いだした。
「金をやるから迎えに来いって言ったら、すぐに来るわ」
「迎えに来るまで帰らへん」とそう言い張るのだ。
私たちはほとほと困ってしまったが
上司が許可したので、その会社に電話をすることにした。
はたして、対応してくれるのかどうか。
普通に考えたら、退職した人のことなど、ここまで面倒をみれるはずがない。
しかも、「迎えに来い」などと言う人物に、会社が快く応じることはできはしないだろう。
しかし、製菓会社の奥さんは、「迎えに行きます」と言ってくれた。
そこの会社は給与預入もしてくれていたので、奥さんにも毎月お世話になっていたのだけど(だから、たまには私たちもお菓子を買っていた)
まさか、そこまでお爺さんの面倒を見てくれるとは思いもよらず、ある意味感心した。
たぶん、長年働いてくれたお爺さんを無碍にできなかったのかもしれない。
そうして、奥さんはお爺さんを迎えに来て
「どうもすみませんねえ」と頭を下げて、連れて行った。
しかし、お爺さんは
「ほれみろ!金をやると言ったら、すぐに迎えにきたやろ!」と
まるで金欲しさのために迎えに来たと思っているようなことを言っていたのだ。
そんなことが何度も続き、あまりお爺さんがダダをこねるので、
一度上司が「そんなワガママ言うたらアカン!!」と一喝。
すると、お爺さんはまるで子供のようにシュンとして「はぁ~い」と返事をした。
そんなことも記憶に残っている。
それからどうなったのか、
いつのまにかお爺さんは来なくなって。
平穏な日が続いていたある日
おじいさんの消息を知ったのは1本の電話だった。
どういう関係かしらないが、血縁者らしい人からの電話を上司が取った。
なんでも「亡くなったから、お金のことはそちらのほうがよく知っているだろう」とかなんとか。
いくらなんでも、電話でどこの誰ともわからない人には詳細は教えられず
よほど相手の口調が気に入らなかったのか
上司はかなり愛想のない返事をして電話を切っていたけれども。
そうか・・・
あのお爺さん、死んでしまったのか・・・と、その時知った。
退職してからの、お爺さんのあの変わりようは本当に驚くほどだった。
数か月なんだけど、あっという間という言葉がぴったりな感じで。
きっと、環境の変化についていけなかったのかもしれないけども
張り合いがなくなると、あんなに変わってしまうんだ。
あのまま働いていたら、変わらなかったのかなあ。
あんなにお給料を楽しみにしていたのに・・・と、ひどく残念に思った。
~認知症予防に力を入れたり、介護サービスを利用できる今の時代だったら、
もう少しお爺さんの変化は穏やかで、もう少しは長生きできたかもしれないなあ~
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